「ヴァンパイア戦争2〜月のマジックミラー〜」 笠井潔 講談社文庫 ISBN:4062747995

全11巻の超伝奇ヴァイオレンス第2弾。
タイトルだけは以前に聞いた事があったものの、中身を読んだ事がなかったので、
今になって読めるのは、ある意味幸せかも。
以前に挿絵が付いた時は、天野義孝さんだったらしいですね。
そちらも集められたら、チェックしてみたいところ。


前巻でスパイアクションからSFに転換したと思ったら、
今巻ではそのSF要素が、見事縄文時代から現代までに至るまでの歴史を
偽史によって作り変え、伝奇要素に結実してます。
ただ、この偽史の作り変えによる伝奇要素も、
まだまだ続く「ヴァンパイア戦争」シリーズの一要素に過ぎないらしく、
ジャンルに「“超”伝奇ヴァイオレンス」と付くのも頷けるような。
「ヴァンパイア小説・伝奇もの」というジャンル分けで、手に取った身としては、
終わり頃には壮大なSFサーガになってそうなのが、嬉しい誤算で、期待大っすね。
……SFサーガというのも微妙なのかも。
特定のジャンル訳が難しいほどに混沌としているのが、この「ヴァンパイア戦争」シリーズの味っぽいし。


以下ネタバレ↓
光のラルーサ文明、闇のガゴール文明の対立などと言う
これだけで、かなり壮大なスペオペになりそうな設定から始まり、
さらに、実は地球にはその両文明の痕跡があり、
ムー大陸には、光のラルーサ文明を伝えるヴァンパイア一族がいて、
かたやイスラエル失われたの十支族は、闇のガゴール文明の継承者。
両者の文明を伝える子孫達はなんと全世界に広がっていて、
現在日本では、縄文人の血を引く、山の民古牟礼一族と、
日本の歴史を裏から操ってきた陰のフィクサー、失われた十支族、
レビ族である礼部一族が対立しており……。
と、ここまで話を縮小するまでに出てくる膨大な設定の量。
確かにまゆつばもの、と言ってしまえばそれまでだけど、
ここまで膨大な量を丁寧に展開していくと、ある種の説得力があり、
またそれが小説の分厚いバックボーンになってて、これだけでも楽しめるのはいいっすね。

終了。


さて、今巻登場の新たなヒロインキャラ水城蒔絵。
キキとの鴻三郎を巡っての対決を見てみたい、と思うのは駄目ヲタのサガですが是非。